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戦いの墓標

「自殺戦争の時代」

日本の年間自殺者は平成10年から14年連続3万人を超えていました。3万人を切ったとはいえ、今尚、沢山の人々が自殺しています。かつて交通事故死者数が1万人を超えた時代を「交通戦争」と名づけられました。これは年間死者数が日清戦争の戦死者に匹敵するからとのことでした。今はまさに日本は「自殺戦争」の時代に入っているといえます。

 

「自殺大災害の時代」

阪神・淡路大震災の死者は約6,000人とされています。年間自殺者の数字だけで見ると、1年に阪神・淡路大震災が5回起きているのと同じです。かなり乱暴な表現になりますが、きっと3万人という数字は東海大地震どころでは無いのかも知れません。年間自殺者数は天災地変の被害を上回っているのではないでしょうか?しかし、何より恐ろしいのは、みんなが普通に暮らしているうちに、平和な日本でこれだけの人が自殺で亡くなっていることだと思います。

 

「自殺とされなかった人」

年間自殺者数は、死因が自殺と判断される人の数です。「自殺とされた人」です。例えば、遺族が医者に頼んで自殺を事故死にしてもらったという場合もあるでしょう。現在行方不明者の中に、もう既に山や海で自殺し、遺体が発見されていないだけという場合もあるでしょう。飛び降り、首吊り、リストカット、睡眠薬など、自殺を試みたが発見が早くて命拾いしている人もいます。年間自殺者3万人の裏には、未知数の「自殺とされなかった人」がいるのです。

 

「現代日本人の戦い」

現代の自殺を戦争とするなら、今の日本人は何と戦っているのでしょうか。身体の障害。不治の病。癌や白血病。貧困。多重債務。借金苦。いじめ。コンプレックス。家庭内暴力。DV。幼児虐待。ひきこもり。伴侶の浮気。嫁姑。嫌な上司。要するに家庭や仕事のストレス。人間関係。「うつ病」などの精神疾患。日増しに迫る老化。高齢化社会。介護。いかがですか。一人でいくつもの戦争をしている人がいるのではないでしょうか。

 

「戦いの墓標」

この戦争で負けた人、要するに「自殺した人」は敗者でしょうか?

私は、敗者ではないと思います。あえて言うなら「犠牲者」だと思います。もし悔い・恨みを持ったまま死に至った魂があるのなら、「どうかやすらかに」と祈ります。

 

「死の選択肢」

「尊厳死」という考え方があります。「自分の意思で死を選んだ」という人たちです。自殺を選んだ自分を誇りに思い、亡くなった方もいるでしょう。全く治る見込みの無い患者に対する延命治療が問題視されたりしています。医学が発達し、早期発見早期治療で、重病に至らないことが増えています。科学・文明の発展。生活水準の向上。食の安全が見直され、様々な健康法がブームになり、先進国の平均寿命は延び続けています。死因は病死・事故死・老衰だけではなく、「自殺」も一つの選択肢になるのでしょうか?戦いの裏側で、「自殺」を肯定する気持ちも解らなくは無いことが、今の私のジレンマです。

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